玉原高原・スノーシュートレック

  群馬県北部位置する玉原高原(たんばらこうげん)は、関東でも有数の豪雪地帯で、積雪は3mを越えるという。
  標高2158mの武尊山(ほたかやま)の山麓に広がるなだらかな起伏の高原には、関東一のブナの森があると聞いて
  行ってみたいと思っていた。そんなおり、アウトドアショップ「THF NORTH FACE」主催のイベント、
  「玉原高原・スノーシュートレック」を店頭で知り、これはいいチャンスと参加することにした。
  新宿駅前集合の日帰りバスツアーで、スノーシューもブーツもレンタルできるお手軽ツアー♪

  新宿を出発したバスは関越道で沼田、そして玉原高原へ。
  この数日寒い日が続き、横浜でも雪になったりしていたが、それでも暖冬には変わりなく、
  カーブを切りながら高原へ向かうバスの車窓に広がる山肌には雪が少ない。
  玉原高原はスキー場にもなっているので、道路はきれいに除雪され、駐車場にはすでにスキー客の車で
  いっぱいになっていた。

  バスは予定通り10時過ぎに到着。すぐにスノーシューを着けて森へ入る。
  積雪は40cmくらいだろうか、なだらかな起伏のブナの森は一面真っ白な雪におおわれている。
  雪の表面は凍っていて、歩くとバリバリと音がして硬く、すこし歩きづらい。

  

  聞いていたとおりの広々としたブナの森。
  雪が消える頃には、森のあちらことらでミズバショウが見られるという。
  芽吹きを迎える新緑の頃には、いまとはまるっきり違う景観となって、
  その頃を想像してみるのもまた楽しい。

    

  森の奥へと進むにつれて青空が広がってきた。
  葉を落としたブナの枝が、澄んだ冬の空に高く広がる。
  根元を見れば、幹のまわりだけまあるく雪がえぐれている。
  これは「根周り穴」といって、ブナが元気に生きている証拠だ。
  芽吹きの春にむけてブナは、根から幹へ、そして枝先へと活発に養分を送っている。
  こうして命を育む活動によって幹が温まり、それにより樹上に積もった雪が解け
  幹を伝って根元に流れ落ちる。その雪解け水が根元の雪を解かす。
  森の春は、根元のまわりから円形状に広がっていくともいえる。

  

  早春のブナの森は、あたたかな陽射しに満ちてとても明るい。
  残雪の林床も、白い絨毯を敷きつめたようで冷たさを感じない。
  私たちはおもいおもいの場所に腰を下ろして昼食をとり、そのまま白い絨毯に寝転がる。
  風もないブナの森では、暖かな陽射しがじつに気持よく、
  誰でもコロンとなりたくなるような不思議な優しさに包まれる。

    

  寝ころんでブナの梢と青い空を見つめる。
  幸せな時というのは、こんな一瞬だったりすることがほとんどだ。

  雪の森を自由に歩きまわってブナの巨木を探してみた。
  この森には樹齢300年を超すとみられる太いブナの巨木が何本もある。

  

  写真のブナは私が見たなかでいちばん大きいと思ったブナで、
  実際は写真よりずっと立派に見える。
  どっしりと大地に根を下ろした姿がなんだか頼もしい。

  森に本格的な春が訪れるのも、もうすぐだ。
  林床の雪が消えかかる頃にはミズバショウが咲きだすという。
  淡い緑に染まる森は、またどんなに素晴らしいことだろう。
  また来るからね、大きなブナにそういって森を後にした。

                                       

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