白馬岳

蓮華温泉から白馬大池を経て白馬岳へのぼり、
さらに雪倉岳〜朝日岳と縦走して蓮華温泉に戻る2泊3日の山行計画で、
深夜横浜を出発した。

北アルプスの中でも花の多いことで知られる白馬岳は、ちょうど20年前の1988年の夏に初めてのぼり
そのときは猿倉〜白馬岳を経て鑓温泉から下山した。

  1988/7/28 20年前の白馬大雪渓

大雪渓の途中で天候が急変、雨と強風に叩かれ、身も縮むような寒さに震えながら肩ノ小屋に着いたとき、
ストーブの焚かれた小屋の暖かさと、熱いラーメンを食べて生き返った気分を味わったのが、よき想い出としてある。

高山の縦走では、必ずといっていいほど天気の悪い日があり、雨や風に散々な思いをするのだけど、
その辛かった時のことが、あとになってみるといちばん印象に残っていたりして、
真っ青に晴れあがった空の青さや、その空の下に広がる山々の景色が、さらに美しい想い出となって鮮やかさを増す。
山は、アメとムチの両方でバランスよく、山に登る者を見事なまでに惹きつけてしまう魅力をもっているのですね〜

                        

中央道を豊科ICで降り、国道を糸魚川市にむかって走る。
夜明け前の暗い林道を走りたくないので時間調整しながらいく。
穂高、白馬と過ぎ、北アルプス線に沿って走っていると、だんだん空が明るさを増してくる。
小谷村に入り、湯原トンネルをぬけると新潟県。そこから少し先にある平岩駅のところを左折して林道に入る。

ここから林道を終点の蓮華温泉まで約1時間、くねくね道をのぼっていく。
蓮華温泉までバスも入っている林道なので、路面の状態は良好、まったく問題なかった。







  道路には「熊出没注意」の看板があった。
  うん、ここはクマさんたちの領域であり、わたしら人間は彼らに敬意を表さなくてはならない。
  などと思いながら走っていた前方を、黒い獣が素早く横切った。真っ黒なかたまりであったことからクマだと思われる。
  たぶん、朝食など食べにきていたのではないかしら?

           

途中に展望台の立札があり、片側からは山が望める場所があったので、クルマをとめて山を眺める。  
時刻はちょうど6時、もやっとした大気のなか、緑の山肌に残雪がブチのようになった朝日岳が見えた。
  


                     

蓮華温泉は山奥の秘湯というのがぴったりの温泉だ。
下山後この温泉に浸かるのが楽しみ♪ バナナとパンで軽く腹ごしらへをすませて7時出発。

  朝露に濡れたヤマアジサイが、瑞々しいブルーの花を輝かせて出迎えてくれた。
  久しぶりに背負う大きなザックが肩にこたえる。はやくも汗だらだら。。ふぅ〜
  何度かザックを下ろしては汗を拭いしながら白馬大池へと向かう。

      
                            霧に包まれる樹林帯                  登山道脇に多く見られたイワシャジン   




    

樹林帯が途切れ、岩の歩きにくい道をのぼっていくと、あたりが急に開け、ハイマツ帯の奥に池が見えたと思ったら白馬大池に着いた。
時刻は11:20分。あたりは霧に包まれてよく見えないが、お花畑が広がっている。
予定ではここに一泊して、翌朝白馬岳へ上がるつもりでいたが、
白馬大池から白馬山頂まで3時間弱で行けるとあって、それほど疲れも感じていなかったし、
夜までここでただぼぉ〜っと過ごすのもなんだなと思い、白馬岳へ向かうことにした。
お花畑に咲くハクサンコザクラを急いでカメラに収めてから歩き出した。

                    

白馬大池からは岩ザクの道を高度を上げていく。
しかし、肩へ食い込むザックがいよいよ重く感じてきて、なんか元気がでない。
ちょっと進んでは歩きを繰り返し、小蓮華岳まで来た。
パトロール隊の人が休んでいたので、白馬山頂までどんなかんじかと尋ねると、
これからピークを3つ越えていかなくてはならないし、バテているようだから大池へ戻った方がいいと言われた。
そういわれると山頂まで歩く自信もなくなり、途中で歩けなくなったらどうしようと不安も募り、
あと1時間半の道のりではあるが、言われたとおり引き返すことにした。

             
ガスって眺望のない登山道をハァハァしながら登る        それでも一瞬、流れるガスの合間から白馬岳が見えた!

いま来た道をとぼとぼと下っていったところで、単独行の男性登山者に行きあった。
そのかたと話をしていたら、ここまで登ったのに引き返すのはもったいない。(まったくそうだ!)
その言葉に頷き、また気持ちが変わった。
そして、そのかたと一緒に山頂へと向かうことになった。
親切なそのかたは、私の荷物から重いものをいくつか自分のザックに入れて持ってくださった。
ほんとうにありがたかった。
思いがけなく同行者ができて心強くもあり、荷物も軽くなったことで、また元気を盛り返すことができた。
ゆっくりゆっくり歩を進める。

山頂近くになって雨が降り出してきた。カッパを着て小屋へと急ぐ。
白馬岳山荘到着。時刻は16時近かった。

同行してくださったかたにお礼をのべ、ビールで乾杯した。
小屋ではすぐに夕食が始まり、そして窮屈な部屋を割り当てられた。
さすがに疲れていたが、夏の山小屋いつものこととはいえ、窮屈な雑魚寝で息苦しく眠れない。





5:44 白馬山荘からから眺める槍ヶ岳方面(左奥の尖がったピークが槍ヶ岳) 下に見える小屋は白馬尻小屋

やっと夜が明け、朝になってみると、体調がイマイチ。いつものように疲れがとれていない。
白馬岳から朝日岳への縦走は雪渓のトラバースが何箇所かあり、コースタイムも長く体力の要るコースなのだ。
しかも朝日岳から蓮華温泉までが、これまた長いときてるので、いまの調子では先が思いやられた。
行くかどうしようかとずいぶん考えた末、やはり無理しないでおこうと思った。
単独行であるがゆえ慎重にならざるを得ない。人さまに迷惑となることだけは避けたい。



     
6:23 白馬岳山頂 2931m                          これから歩く綾線が雲海の中に浮かぶ

食欲はなく、朝食はほとんど食べられなかった。
6時、山小屋を出発。白馬岳のピークを踏んで記念写真を撮る。

   
雪倉岳から朝日岳へとつづく綾線                            雪倉と白馬大池の分岐 三方境

同行していただいた男性に、朝日岳を断念して下山する旨を話した。
このかたとは途中の分岐まで一緒に歩き、そこで大きく手を振って別れた。
ほんとうに助かりました。この場をかりてあらためてお礼申し上げたい。




             
             ガスがとれてきた。青い空をバックに、白馬山頂と歩いてきた綾線がきれいに見える。




    
                                         赤いベンガラが撒かれた雪渓の登山道をトラバースする登山者が小さく見える

小蓮華岳から、向かう予定だった雪倉岳を眺める。
雪渓のトラバースを行く登山者が米粒ほどに小さく見える。
朝日岳の稜線は白馬よりさらに花が多いと聞いて歩きたかった。
今回は残念だったけど、山は逃げやしない。また来よう。

         
タカネナデシコ           トウヤクリンドウ          ミヤマクワガタ            ヨツバシオガマとイワギキョウ



   
ミヤマダイモンジソウ・ハクサンフウロ・タカネヤハズハハコ・ウサギギク

昨日のぼってきた道を、花を眺めながらゆっくりと下った。
花の豊富な白馬岳、これら高嶺の花を見たくて登ってくる人たちも多い。

    

小蓮華岳の岩場ではライチョウを見ることができた。
槍ヶ岳への稜線では、つがいで砂浴びをする姿があったし、雄山では親子連れで歩くかわいい姿も見られた。

お花畑を眺めて佇んでいるのはイワヒバリ
高山でしか見られない、こうした野生動物との出会いほどうれしいものもない。




      高山植物の女王コマクサ

白馬大池はまたもや霧におおわれていた。
蓮華温泉めざしてどんどん下る。
温泉の匂いが漂ってくるあたりに来たら、足が痛くなってようよう歩いた。
やっと着いた、16時だった。
蓮華温泉ロッジの宿泊手続きを済ませ、足を引きずるようにして駐車場まで歩き、クルマからお風呂セットを出してまずは温泉直行。


山奥の秘湯・蓮華温泉につづく  

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