乙女高原の

例年より早く梅雨明けしたものの、その後天気はパッとせず、夏らしい青空が広がることもなく8月を迎えてしまいました。
曇り空や雨の日ばかりで山の予定も立たず、短時間で行って来られるところをと考え、乙女高原が思い浮かびました。
クリスタルラインを走るたび気になっていた「乙女高原」、いつか行ってみようと思っていたのがやっと実現したしだいです。

中央道を勝沼ICで降り、両脇に広がるぶどう畑を眺めながら塩山めざして走ります。
牧丘からは杣口(そまぐち)林道で焼山峠へ、峠から5分くらい走ったところに高原の駐車場がありました。


乙女高原は標高約1700mで、ここは戦後まもなく競技用スキー場として整備されたところで、それが時代とともにスキー場として利用されなくなり、
平成12年を最後にスキー場として役目を終えました。
スキー場としては活用されなくなったものの、自然景観のよさ、草原のお花畑を次の世代に残そうと、ボランティアのかたがたの熱意によって
草原が管理されることになり、草刈り作業や散策路の整備などを毎年行い、素晴らしい高原のお花畑が見られるようになりました。

乙女高原は「亜高山性高茎草原」と呼ばれ、茎の長い草が多く、そのため人間などによる踏みつけに大変弱い性質をもっています。
それで、草原内にはロープで区切った遊歩道を設置し、植物の保護をしています。

スキー場の跡地が、いまでは美しいお花畑に生まれ変わったなんて、、、しかも周囲は森です!
もし、ここが放っておかれたらどうなったでしょう。
草原ができると、そこに明るいところを好む木が生えます。
その木はやがて林となり、次に暗いところでも成長できる木が生えて、森林を形成します。
この一環を「遷移(せんい)」といいます。
乙女高原がそうならずに、森に囲まれた美しい草原を維持できているのは、人間の手が加えられているからです。
里山が藪山とならずにいるのと同じですね。
人間も自然の一部であり、こうしてほどよく人間の手が加えられることによって、花が咲き、虫たちが集まり、豊かで美しい自然が維持できるのですね。

   
乙女高原の案内図 散策路をたどってただ歩くだけなら1時間ちょっとあれば十分ですが、私はなぁ〜んと4時間もいたんですよ

8月初旬は、草原のお花畑はもっとも花が多い時期です。
とはいえ、今年は天候不順で日照不足のため、例年よりずっと花のつきがよくないそうです。
毎年ここに花を見にいらっしゃるかたは、今年は花が少ないと嘆いていました。
私ははじめて来たので、そんなふうには思えず、花いっぱいの草原をまえにワクワクしどうしでしたけど。。

     

ヒヨドリソウ(左)やクガイソウ(右)をかきわけるようにして遊歩道を進み、花と花に集まるたくさんの虫たちを観察しながら歩きます。



 青紫色の花がブラシのようにたくさんついた姿が美しいクガイソウ
 葉は輪になってつき、それが数えてみると9段あるので、それで九階草の名がついたそうです。
 夏の高原を代表する花のひとつですね。

 またこの花は、やってくる昆虫の種類を選ばないことから、
 どんな昆虫でも花の蜜を採ることができます。
 どおりで、クガイソウにはいつも虫たちが集まっていて、とても賑やかです。

       




  上の写真でクガイソウにとまっているチョウを拡大してみると、
  ん? はじめて見るタイプです。

  どうやらこれはチョウではなくガ(蛾)のようです。
  ヒョウモンエダシャクといって、シャクガ科のガで、
  食草はレンゲツツジやアセビといった有毒植物です。
  それらを食べることにより、体内に毒をため、
  鳥などの捕食を免れているそうです。
  ガにしては綺麗ですね。

  やはり上の写真で、クガイソウの横を飛んでいるのは
  ヒカゲチョウでしょうか??

  







「亜高山性高茎草原」と呼ばれる乙女高原、たしかに丈の長い草が多く、その様子は先月に行った横尾山の草原に似ています。
横尾山の草原では、まだ蕾のキンバイソウがたくさんあったので、ここ乙女高原ではキンバイソウの群落が見られるかなと期待してたのですが、
天候不順に日照不足、さらにシカの食害もあって、花の数が少ないです。

     
草原にポツリポツリと咲くキンバイソウ。いつもなら群生しているハズ、、?       草丈1m以上ある背の高いタチフウロ

さて、シカの食害は丹沢をはじめ、各地での被害をよく耳にしますが、
南アルプス前衛の山でアヤメの群落で知られる櫛形山では、ことしはついにアヤメが1本も咲かず、全滅したと聞きました。
この原因も、どうやらシカが花芽を食べつくしてしまったことによるらしいのです。
私の大好きな山でもある櫛形山は、これまでなんどものぼっていますが、アヤメの最盛期には周囲が紫色に染まるほど見事な群落が見られました。
そのくらい、アヤメの花が多かっただけに、1本もないというのが信じられないくらいです。

天敵がいなくなり増えすぎたシカ、シカには罪がないのですが、自然のバランスが崩れるのは確かなことです。
シカ除けの柵などを設置しているところも多いのですが、これも完全とはいえません。
人間によってシカの頭数を調整するのがよい方法ですが、猟師の高齢化が進んだいまでは、これも容易ではないそうです。
自然のバランスを維持するのって難しいですね。

          
遊歩道きわに顔を出すように咲いていたカワラナデシコ         コオニユリ                        コウリンカ(紅輪花)

夏の高原で太陽をいっぱいに浴びて咲く花・コウリンカ。 一見しおれているように見える垂れ下がった花びらですが、この状態で最盛期。
この花が咲いていると、夏の高原らしさを感じてしまう私です。



                                               

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