菊花山 (きっかさん)

3月は3度、4月は4度、5月なら5度、これは山好きな人が春の山へ訪れる回数で、
そのくらい春の山はすばらしいという例えです。

木々の芽吹きをまえに、スプリングエフェラメルたちが林床に咲き始める3月、
そして、暖かな春の陽射しとともに芽吹きがはじまり、山はだんだんと淡い緑が広がっていきます。
やわらかなグリーンのグラデーションに染まる山肌は、なんて美しいのでしょう!
春は日ごとに麓から山へと駆けあがり、眩いばかりの新緑に染めあげていきます。


大月駅のすぐそばに聳える標高643mの菊花山、その可愛らしい名前に惹かれ、のぼってみたくなりました。
地元の人たちのあいだでは「貧乏山」だの「バカ山」といった呼び名もあるようですが、
どうしてどうして、眺めもよく、花いっぱいの素敵な山でした。

      
                                        


無辺寺という、幕末三剣士・桃井春蔵の菩提寺として建立されたお寺の境内から登ってみました。
 桃井春蔵は、江戸詰めの柳澤藩士の剣術指南として召し抱えられた刀術に優れた人物で、
 江戸日本橋南芽場町には道場「士学館」を開き、刀術を究めていたそうです。

       
無辺寺                                         菊花山不動尊


足の乗せ場に困るような幅の狭い石段を上っていくと「菊花山」とある不動尊があって、
山道はそこをまわりこむように続いていました。
鉄塔のある明るい道に飛び出すと、あたりにはイカリソウがたくさん咲いてお出迎え!
そして目を上げれば黄色いヤマブキ、幸先のいい花の出迎えにひとりニコニコです。

        
花のカタチが独特なイカリソウ           ヤマブキの下にイカリソウが咲いて         ジュウニヒトエ


細い山道には春の花がいっぱい並んでいます。
ツクバネウツギ、フデリンドウ、ヤマツツジ、ジュウニヒトエ、ヒトリシズカなどなど、
とくに多かった花はイカリソウで、群落になって咲いていました。
歩きだしからたくさんの花に出会い、ちょっと歩いてはしゃがんで花の撮影の繰り返しで、
ちっとも先へ進めないうれしい状態。花と向き合いうずくまること1時間ちかく。。。

                 

          
          春の雑木林代表選手 ヒトリシズカ  一人静なんだけど、いつも集まって咲いていますよね。    




      
フデリンドウ  ほんと、蕾のときは筆みたい。               ツクバネウツギのやさしい彩りが春らしくて、、、


お花にばかり気をとられて、景色の方がすっかりお留守になってました。
山道の右手からは、大月の町とその向こうに山並みがバッチリ臨めます。


よいしょよいしょと高度を上げていくと、さらに眺めはよくなって、
小金沢連綾、奥多摩の山々、御坂山塊などが手に取るように見えます。
そういえば富士山が見えなかった、、、雲の中だったのかなぁ?

    


痩せた尾根を進んでいくと岩場の登りになって、まるい岩がゴロンゴロンした菊花山頂に着きました。
コースタイム堂々45分遅れの到着です。もちろん、誰もいません。
ここでの〜んびり大休止。いやぁ〜それにしてもいい眺め!

  


さて、ひと休みした後、馬立山を目指して出発です。
予定では九鬼山まで行こうと思うのですが、このペースだとたぶん無理そう。。

山頂からは急な岩場の下りです。ここは慎重に下ります。
芽吹いたばかりのミズナラの樹林、そして登山道の両側にはヤマブキが咲いて、
緑と黄のコントラストも楽しく爽やかに歩けます。

   
山のそこかしこに咲いていたヤマブキ、風水でも黄色は元気がでる色とされていますが、
淡いグリーンによく映える明るい山吹色に、たくさんの元気をもらいました。ありがとう


ゆく手の景色、緑の濃淡に彩られた山がとっても綺麗! どこもかしこも瑞々しい緑が広がって、春山全開ワンダフル〜

    


足元に咲くヤマツツジがオレンジ色も鮮やかに、がんばってと励ましてくれて、

     

森にはチゴユリの群落、うつむいている花がほとんどでお顔がよく見えないのですが、
ここではしっかり顔を見せてくれました。

      ホタルカズラは小さいながらも目立つ花

あいかわらずあちこちに咲いているイカリソウですが、めずらしい白花が一株ありました。
おもしろい形をしているイカリソウの花、こちらに(クリックしてね)取り上げたのでよかったら読んでくださいね




    
沢井沢の頭 (740m)                             馬立山頂 (797m)


沢井沢の頭に着くと、馬立までは20分とあります。
岩場を巻いていくといやらしいザレがあり、ここを通過して一登りしたところが馬立山(797m)でした。
ふぅ〜 これまで誰にも会わずに来ましたが、ここで男性の二人連れとすれ違いました。
九鬼山から来たというので、どのくらいかかりますかと尋ねると、
九鬼山まではタイヘンだよ〜 あと3時間はかかるよ、、、と。
あと3時間はオーバーだとしても、すでに14時近い時刻なので、きょうは九鬼山へは行かずに下山することに決定。
そう決めたらなんか気がラクになって、ふたたびルンルンと歩きだしました。

ここを左に行くと礼金峠を経て九鬼山です。
もう20年以上前に歩いた道ですが、このへんの景色はぼんやり記憶に残っています。

予定では札金峠から紺場休場をへて田野倉駅へ向かうつもりにしていましたが、
道しるべに田野倉尾根経由で駅まで50分と誰かが記入してあり、道もよいとあったので、
昭文社の地図には載っていなかったけど、田野倉尾根を歩いてみることにしました。時間も大幅にショートカットできるしね。
馬立から来て、まっすぐに進むルートがそうなのですが、道をみるとよく踏まれています。
で、この道は正解でした。明るく歩きやすい尾根道です。
分岐からしばらくすると、片側が切り払われた眺めのいい場所に出ました。


真正面にどっしりとした九鬼山が眺められ、山肌にはちらほらヤマザクラのピンクが浮いています。
こうして眺めていると、ああ、やっぱり登りたかったなぁ、、などと思ってしまいます。


さらに進んだ途中は、尾根を登るのと巻くのと二つに分かれている箇所がありました。
どっちにしようかと思い、登る方を選んで行ってみると、667.3mの三角点がある植野山のピークでした。

何の疑いもなく、平になったピークの開けた方をたどって進むと、眺めはいいけど藪になっているのが、
ヘンだなぁと思いつつ、山桜がきれいに咲いていたこともあって、ヤブをかきわけ歩いていきました。
左には大月の街が明るく広がっています。
桜を眺めながらあたりも見まわしてと、、、うーむ、やっぱりなんかヘン。
でも、他に道があっただろうか? 見落としていたのかな?
疑問を感じたときは戻るにかぎります。

   

植野山のピークに戻ってよく見ると、藪のなかに道らしきものがありました。
そこを進むとやがて先ほどのピークを巻いた道に合流し、ここには九鬼山と書かれた道標が
巻き道の方を指して立てられていました。
植野山のピークを踏んでいく人はあまりいないのですね。


麓ちかくになってくると、また花が増えだしてきました。
けど、スミレにかぎっていえば、タチツボスミレばかりです。
他のスミレは咲かない山なのかなぁと思ったりしながらも、目を凝らして歩きます。
そしてとうとうタチツボスミレ以外のスミレが見つかりました。



オカスミレじゃないかと思います。
アカネスミレによく似ているのですが、側弁に毛があるのが唯一の違い。




    

あいかわらず美しい芽ぶきの森をぬけて、坂をどんどん下っていきます。
馬立より以降、誰にも会うことなく、小鳥のさえずりのみが聴こえる静かな山道でした。
手作りの木製登山届の箱が設置された先で登山道は終わり、へぇ〜と思う場所に飛び出しました。
将来リニアが走るための敷地でしょうか、山の脇を横切って伸びています。   

その傍らに、小さな赤い祠と石神様、大きな御神木がありました。
ここから田野倉駅まで5分ほどです。

  

ラベンダー色を基調にした駅舎、おしゃれですね〜
あ、電車がやってきました。大急ぎでパチリ。
駆け足でベンチに置いたザックを取りに戻り、ザックを引っ掴んで電車に乗りこみました。
なにしろ田野倉駅からの乗客は私一人ですから慌てて、、、。
で、車内にはいったとたんびっくり〜

    

わっ、なにコレ!!! 全車両機関車トーマス! 楽しい〜〜
車内に自販機まであるんだ〜
もう、イナカモン丸出しで車内をパチリパチリ。学生さんが笑っていましたよ〜
富士急御殿場線、運賃は高めだけど、たのしいローカル線ね。
たった一駅だけの乗車でしたけど、思わぬサプライズでした。

きょうも楽しい山歩きができました。満足、満足!

                            

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