石砂山(いしざれやま)

冬の寒さを思わせる花冷えの日がつづき、春らしい暖かさが遠のいていましたが、
ようやく春を感じる陽射しがもどり、この日は久しぶりのポカポカ陽気になりました。
予報によると最高気温が17℃、風も強くないとのこと、
うん、これなら女神様もお出ましになることだろう、、、と、期待感いっぱいで石砂山に向かいました。

くねくね峠道を右に左にカーブを切りながら着いた牧馬(まきめ)峠、
なんと、峠の手前の路肩からすでにクルマが何台もとまっています。
どうにかやっと一台とめられる隙間を見つけて駐車するも、
やはり女神様の人気は相当なものと感心すると同時に、みんな今日の暖かさを狙って
来ているのだなぁと思いました。

はやる気持ちをおさえて靴を履いたりザックを背負ったりと出発の準備。
まずは昨年のぼった尾根に取りついてみました。

何台もクルマがとまっていたわりには、人の気配がまったくなく、
みなさんいったいどこにいるのかしらと思うほど山は静まり返っています。

急坂をハァハァしながら登り、尾根に出てあたりをきょろきょろしていると、
しばらくして、ふわ〜んと羽ばたきながら女神様がお出ましになられました。
つづいてもう二頭、オスがメスを追いかけるようにクルクル旋回しながら舞い上がっていきます。
ぼぉ〜っと突っ立っている私の周りを、女神様は忙しく飛びまわります。
お願いお願い、ちょっと止まって写真を撮らせて〜

    


はい、女神様とはギフチョウ(岐阜蝶)のことです。

ギフチョウは日本(本州)固有種特産のチョウで、「春の女神」と呼ばれているように、
桜の咲く時期にかぎり、色鮮やかな美しい翅で飛ぶ姿を見ることができます。

ギフチョウ属は、東アジア(日本・朝鮮半島・ウスリー・中国)のみに遺存分布をする原始的なアゲハチョウ科に属し、
またギフチョウは日本の特産固有種として学術的にも重要なものだそうです。


ギフチョウの生息場所となるのは、陽が射しこむ明るい雑木林、つまり里山です。
よく手入れされた森で、スプリングエフェラメルの花々(スミレ・カタクリ・ショウジョウバカマなど)の
蜜を求めて飛びまわります。
ところが、雑木林の宅地化、里山の減少とともにギフチョウも少なくなり、各地で絶滅の憂き目に遭い、
いまでは危急種(絶滅危惧U類(VU))となっています。
石砂山では、この貴重な美しい蝶を保護するため、山の手入れやパトロールなどを行っています。
山の立木のあちこちに、このような貼り紙がかけられ、ギフチョウの採取(卵・幼虫・蛹)を禁じ、
訪れる人に保護を呼びかけています。

ギフチョウは神奈川県指定天然記念物で、保護条例に反する行為は罰金や懲役刑に科せられます。

       カントウカンアオイ

林床にはギフチョウの食草、カントウカンアオイ(関東寒葵)がたくさん見られました。
ギフチョウはカンアオイの葉の裏側に真珠のような卵を産みつけ、幼虫はこの葉っぱを食べて育ちます。


さて、石砂山は標高わずか588mの山で、地図にある登山口は篠原(しのばら)村にあります。
篠原から登って1時間半もあれば山頂に立てるので、ハイキングでは石老山と結んで歩かれています。
それで、牧馬峠からも同じくらいの時間で山頂へ行けるだろうと、お気楽に地図も持たずに山頂へ向かいました。
牧馬峠から石砂山へのコースは、地図に破線さえもないのですが、
それでもギフチョウ目当てで来る人が多いせいか、踏み跡は明瞭で、しかもあちこちにあります。
地図に載っていない道なので、道標などもなく、たまに目印のテープがあったりしますが、
これは作業用のものかと思うような、見当違いのところにあったりします。

途中には私の苦手なザレ場のトラバースが何箇所かありました。
昨年はここを通過するのが怖くて引き返したのでした。
今年はストックを持ってきたので、なんとか大丈夫だろうと進みましたが、
いやはや、ズルッと足が滑ったらと思うと怖くて、ビビリながらやっと通過しました。
そのとき足元ばかり見て、前方を見る余裕がなかったのですが、通過し終わって前を見たら、
こっちへ向かう若い男性がいて、道を塞いでいたことがわかり、時間をとってすみませんと謝りました。
なんだか危なっかしいなぁと思いながら私を見ていたことでしょうね、きっと。

そのかたに山頂までどのくらいですかと尋ねると、もう30分くらいだと思うけど、
急登がありますよと教えてくれました。

それからは誰にも会うことなく、そしてこれがその急登だなと思う場所に来ました。
山の斜面はとても急で、これといった道のようなものもないので、ほんとうにここを上がるのかなと
不安になりましたが、よく見ると足跡はあります。
あのトラバースを戻ることを考えれば、まだここえを登る方がいいかとも考え、
四つん這いになって木の枝を掴んだりしながら、ようよう急斜面を登りました。
登るのが大変なら、下るのはもっと大変、ここを下るのは嫌だなと思いつつ。。

ハァハァ、なんとか無事に難所をクリア、、、いあや〜タイヘンだった〜
ほっと一息ついて踏み分け道を進むと、ポンと尾根に飛び出しました。
人の話し声のする方を見たら、もうそこが山頂で、びっくりするほど大勢の人がいます。
あんなところを登ってくる人はよほどのもの好きってことなんでしょうね〜

   
ベンチとテーブルのある山頂           山頂からの眺め

山頂はたくさんの登山者で腰を下ろす場所もないくらいなので、休憩せずに下山することにしました。
あの急斜面を下る気はないので、まっとうな登山道から篠原に下り、クルマをとめた場所まで車道を歩くことにしました。
安全第一!

山頂から歩き出すと、ひらひら〜〜 ギフチョウが飛んできてスミレにとまりました、シャッターチャンス〜
やっぱ、お花にとまって蜜を吸っている女神様を写したいものね〜

     
ああ おいしい チュッチュッ                         こっちのスミレもおいしそう チュッチュッ

あ、とまった!と思ったら、すぐに羽ばたいてとなりのスミレへと慌ただしく飛び移るギフチョウ、、、
簡単にはよいカットが撮れません

角度がイマイチだけど、でもよかった〜お花といっしょのところが撮れて。。

    

山頂から篠原へ下る道はやはり急だけど、登ってきたときとは違い階段状になっているので危なくはありません。
どんどん下っていくと、手に手にカメラを持ったグループの方たちとすれ違いました。
「どお? いいのが撮れた?」
皆さんギフチョウを撮影しに登ってこられたようで、そう私に声をかけて山頂へむかっていきました。





まっとうな道は歩きやすい、、、1時間もしないうちに篠原登山口に着きました。
麓はのどかな山里の風景が広がり、春の陽射しがいっぱいです。
子どもたちは網を手に小川を見つめ、しきりに何か捕っています。

一方、大人たちが見ている方角は野原になっていて、何を見ているかというとギフチョウが飛んでいる姿です。
私も飛びまわるギフチョウを目で追いかけ、野の花にとまったところへそ〜っと近づいてみました。

          
イヌノフグリの蜜を吸っています                        エイザンスミレ           これはアカネスミレかな?

きょうはたくさんギフチョウを見ることができました。満足、満足
さて、このあとはクルマをとめた場所まで車道歩きです。道端に何か花は咲いていないかと、のんびり見ながら歩きます。
オドリコソウやイヌノフグリ、そしてスミレもいくつか咲いていました。

   

急坂のコーナーを一汗かきながら登りつめると、牧馬峠に着きました。
時刻は14:30分。 お腹も空いたし帰りは相模湖をまわって、カフェ「shu」でお昼を食べていくことにしました。
ランチタイムぎりぎりセーフ、お一人様貸切り状態です。

   
日蓮大橋を渡ってすぐにある畑のある カフェ shu ドアを押して入ると7歳の女の子が描いた絵が展示されていました

「shu」は、ローカルな景色が広がる中にポツンとあるカフェです。
お店の前は畑になっていて、メニューに出てくる野菜はこの畑で採れたもの。
だからとっても新鮮! パリパリ シャキシャキの歯ごたえ、採れたて野菜のおいしさったら格別ね。

  
おしゃれなメニュー                本日のランチ ¥1200(サラダバーとドリンク付き

    
タープの張られたテラス席           青空がこぼれる                 夜にはライブもあります

自家製有機野菜がウリのメニュー、安心できる素材でつくった料理はカラダが喜ぶってね。
静かな山里で聴くライブもいいでしょうね〜
畑を耕やす手をとめて話しかけてくれたオーナーは、日焼けした顔に笑顔が素敵なかたでした。

shuを後に走り出したすぐに、さくらが咲いている古い神社がありました。
ちょっとクルマをとめてお花見、、、、きょうも爽やかなよい一日でした。。


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