日影沢で見つけた春の陽炎(かげろう)

先週、裏高尾の木下沢で、開花し始めたアズマイチゲの可憐な姿を目にしたら
それがどうにも気になって、やはり花開いた姿を見たくなり、
先週行きそびれた日影沢へ行くことにしました。

林道歩きだけなので、靴もスニーカーで、カメラバックだけを肩に歩きます。
昨年は4月16日にここを訪れていて、沢沿いではニリンソウが花盛りでした。
そんな光景を思い浮かべながら歩く日影沢、きょうはとても暖かく、気温は20℃を超えています。

日影沢の駐車スペースにはすでにクルマがいっぱいで、どうにか一台とめられるスペースが
残っていたので、そこにとめると、ドアの横にはアズマイチゲが一輪ちょこんと咲いていました。

森の中にも、ちらほら白い花が咲いています。
こんなふうにスプリングエフェラメルが見られる高尾の森、大都会に隣接する自然の宝庫といわれる所以です。


   
アズマイチゲ(東一華)           キクザキイチゲ(菊咲一華)

アズマイチゲはいまがちょうど見頃、花を踏まないように気をつけながら沢のほとりを歩きます。
>先週木下沢で見られたニリンソウはごくわずかでしたが、一週間後のきょうはだいぶ数が多くなっています。

  
ニリンソウが咲きはじめた沢のほとり             昨年4月16日に訪れたときはニリンソウが花盛り 

大都会に隣接した自然のオアシス高尾山、植生の豊かさは驚くばかりです。
そしてきょう、とても興味を惹かれた二つの花との出会いがありました。 

まずその一つ目は、ヨゴレネコノメ(汚れ猫の目)という花で、
先週はハナネコノメに出会えておおいに喜んだ私ですが、そのネコノメソウの仲間です。
なんて可哀想で、気の毒な名前をつけられたものでしょう。

  
汚れているどころか、色彩もシックで、黄色の苞にはグラデーションがかかり
その黄色い苞から直立する萼に包まれて雄しべがあります。
「ヨゴレ」の名のもとになっているのは葉で、
紫褐色の葉に白っぽい汚れたような斑紋があるため、そう呼ばれているようです。
花にとって気の毒な名前ではありますが、一度聞いたら忘れることなく覚えてもらえる名前で
すね。

※似た花に「イワボタン」があり、その変種とされています。 

そして二つ目は、コチャルメソウ。すぐに連想したのがインスタントラーメンのチャルメラ
なんでもチャルメソウというのもあって、それより小ぶりなのでコチャルメソウとなったとか?
この花(これも立派な花でございます。念のため)、カタチもすごく変わっていて、とても興味深いです。
できれば拡大写真でお見せしたいところですが、あいにくマクロレンズを持っていないので、
ボヤっとした写真ですけどガマンしてくださいね。
撮影ではピント合わせに一苦労のスリムなボディ、細いだけにちょっとの風にも揺れるし〜です。

  


花自体ものすご〜く小さいのでわかりにくいですが、
ルーペで観察してみると、花の形はまるで「魚の骨」じゃありませんか!
猫がたいらげたあとのような魚の骨が花弁なんです。ね〜変わっているでしょ。

ふりむいて見る人も少ない地味で小さな花も、ルーペで見てみると、まるで秘密の扉を開いたように
そこには緻密で繊細な世界を知ることができて、
それはもうわくわくしてくる未知の世界であり、植物のもつ不思議で魅惑的な世界です。
たのしいなぁ〜

そうそう、きょうはちょっといいことがありました。
それはね、水温む春のせせらぎをぽぉ〜っと眺めていたとき、
ルリシジミがひらひらと飛んできて、なぜか私の手の甲にとまったのです。

    
すぐに飛んでいってしまうだろうと思っていたら、ルリシジミは手の甲から手のひらへとゆっくり歩きだして
結局10分くらい私の手をぐるっと一回りしながら歩きまわっていました。
表側は綺麗なスカイブルーの翅で、私の好きなチョウなのですが、
まさかこんなに長いこと私の手にとまって遊んでいくなんて思ってもみなかったことです。
うれしい〜

高尾山のシンボルは天狗様ですが、チョウもそれに合わせて(なことない)テングチョウが春の風に乗ってお目見え。
翅にはチョウの形をした模様がありますね、かわいい

日影沢林道をゆっくり歩きながら登りつめていくと、下山してきた二人の登山者にお会いしました。
これから山頂へ向かっていくには遅い時間だし、上には花も咲いていないと聞いて、戻ることにしました。
三人であれこれ花の話をしながら歩く林道、年輩の男性からは花の名まえやその他
いろいろ教えていただきました。こうしたちょっとした出会いもまた楽しいものですね〜

林道入口の駐車スペースに戻ってきました。
この周辺にもキクザキイチゲやアズマイチゲが咲いていて、森に散らばる白い花が目を引きます。
ここを通る皆さん、花を覗きこんだり、カメラで撮影をしたりと、花とのふれあいを楽しんでいます。

花を見ていらした女性のかたと、これはどっちかしらね〜と話し合っていたとき、
男性のかたが、これもアズマイチゲですよとおしえてくださいました。
キクザキイチゲとアズマイチゲ、どちらも白い花でよく似ているのです。
葉の切れ込みかたで判断するのがよいのですが、個体差があって判別しにくいのもときにあります。
男性は花にとても詳しく(まるで歩く植物図鑑)、細かい専門的な部分までいろいろおしえてくださいました。
こうして説明をうけることで花の奥深さを知り、植物に対していっそう興味が湧いてきます。
さらに、ハナネコノメが群生している場所にも案内していただきました。

 見事なハナネコノメ群生地

もうすっかり雄しべが落ちてしまって、あの愛らしい紅いアクセントは見られません。
受粉が済んでしまうと、雄しべはお役御免となって落ちてしまう、女性原理ですね〜
春の陽炎と呼ばれる花たちの命は儚くて短い、、、この場所はまた来年のお楽しみです。

初夏のような陽気となったこの日、花や蝶をはじめ出会った何人かのかたと
待ちわびた春の訪れを共有する時間を持てて、ほんとうにたのしい一日でした。
ありがとう!

                                        

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