不老山 (928m)

これまで何度となく登っている丹沢の山も、西の外れにある不老山は行きそびれていました。ユニークな山名の不老山はどんな山なのでしょう。
「不老」からは「不老長寿」を連想したのですが、山名の由来はそれとは違い、山の平になった部分をいう言葉だと、どこかで読みました。
そういえばなるほど、不老山の尾根は平になっています。

丹沢湖に架かる美しい形の斜張橋・永歳橋を渡ってすぐにトンネルをくぐり、湖に沿って走ると「浅瀬」で、その先の林道は車止めのゲートで行き止まり。

  

道路には路駐の車が何台も並び、すでに停めるところがない。
こんなに登山者が来ているのかと意外に思ったけど、どれも釣り人の車だとあとでわかりました。
なんとか一台置けるスペースがあったのでそこに停めましたが、はたして停めていい場所かどうか?


ゲート横の隙間から、沢に沿った砂利道の林道を歩きだすと、山側にはホトトギスがたくさん花をつけています。いまがちょうど花の盛りなのでしょう、やたら多いです。

          ツルニンジンも咲いていた

花びらの紫色の斑点、これが鳥のホトトギスの胸にある模様に似ていることから由来した名前ですが、え〜?どこが似ているというのか(?_?)




       
美しい青紫色の繊細な花、セキヤノアキチョウジ。               沢では釣り人の姿も見られ、どうやらヤマメが釣れるようです。
とても小さい花で、関東と中部地方だけにしか見られない花です。     
このあたりいくつもの沢があり、大勢の釣り人が入っています。




ゲートから10分ほど歩くと夕滝橋という吊り橋があって、不老山へはこの橋を渡ります。

    

橋には、一名づつ揺らさずに渡るようにと注意書きがあります。
折れそうな心細い板が3本渡してある吊り橋で、歩くとかなり揺れます。 ま、落ちたとしても、どうということはないでしょうが、、。




    

山頂まで2時間くらいですが、ヒノキやスギの人工林が多い山道は退屈です。鳥のさえずりが聞こえてくるのがせめてもの慰め。
ピーィと甲高い鳴き声はシカです。何度も鳴くシカの姿を見つけて急いで歩いたけど、すぐにいなくなってしまいました。


90分ほど歩いたところで、林道に飛び出しました。  世附(よづく)峠です。
今回の山歩き、そのお目当てがありました!

     

心和む手作りの道標、これが見たくてやってきたのです。
丁寧に描かれた絵や文字、そのひとつひとつに作り手の山を愛する情熱が伝わってきます。絵心があり、記された言葉からは知性が感じられます。
またコースの詳細も分かって、山を歩く身には心強い道標です。杭には雨避けが被せてあって、この雨避けには空き缶はじめ、いろんなものが利用され、
なかにはフライパンもあるそうです。
いったいどんなかたが作られたのでしょう。とても興味を惹かれるとともに、他にもあるかなと楽しみになってきました。



十字路になっている世附峠から不老山のピークへと向かい、緩やかな森の尾根道を40分ほど歩くと、平らな山頂に着きました。

       

不老山は東西に2つのピークがあって、左写真は西で926m、富士山が見えます。右は三角点のある928mのピーク。

これといった展望もない東の山頂には、ベンチとテーブルが置かれています。
めずらしく先客がいて、少しあとから登山者が二人やってきました。
どの人も単独行で、おにぎりを食べながら皆さんと情報交換しました。コースの状況など、実際に歩いた本人から聞けるので、とても役に立ちます。
お互いに山頂の証拠写真を撮り合って、それぞれの方向へと別れます。私は車を停めた場所へと戻るのでピストンでしたが、他の皆さんは鉄道利用なので駿河小山駅へ。





    途中にはこの道標がありました。

世附峠へ戻って、また道標を見ていたら、 
この先の湯船山方面へ10分歩いたところに見晴らしのよい場所があるので、浅瀬へ行かれるかたも是非寄ってみてくださいとあったので、行ってみることにしました。



     明るく開けた気持いい場所樹下の二人」
平らな山頂の不老山が見えます。

森を抜けると気持のいいカヤトの原になって、道標に書いてあったとおり、展望もよく気持のいい開けた場所がありました。


もちろん道標もありました。それによると、道標の作製者は岩田澗泉さんというかたで、なんと大正15年生まれです。西暦ですと1926年ですから、今年82歳でしょうか。
湯船山〜不老山コース整備を志し、もうお一人やはり高齢のかたと二人で、荒れた登山道を整備しつつ道標を立てていらっしゃったようです。
ほんとうに頭の下がる思いとともに、お二人の山への想い、その情熱を傾けてのご苦労に、胸が熱くなります。いつごろから手がけられたのかわかりませんが、
道標は朽ちかけているものもあり、また新しく作りなおしたものもあり、一番新しいもので2004年と表記されています。
お元気でいっらっしゃることを願いつつ、いつかこの道でお会いできたらいいなぁと思います。

 「樹下の二人」、、この場所を岩田さんがこんなふうに名づけました。
  きっと、ロマンティックなかたなのでしょうね〜







カヤトのむこうに見える、なだらかな曲線を描いた山が、歩いてきた不老山です。

そしてこのコースには、5月から6月にかけてサンショウバラが咲くのです。
岩田さんの道標にも、サンショウバラのことが書かれているように、バラの花咲く山でもあるのですね。来年、サンショウバラの咲く時期にまた来よう。
来年の初夏が待ち遠しいです。

                                                    

inserted by FC2 system